高濁度除去
Ⅰ. 濁度除去・ 緩速ろ過 の前処理施設 について
II. 高濁度・ 生物ろ過システム ( 緩速ろ過 の 前 処理 施設 )
【現場】
某水道局○○浄水場においては、年間を通じて高い濁度の原水により、通年的に凝集剤注入を余議なくされています。さらに集中豪雨の回数が増えると、凝集沈殿も効果がなく、緩速ろ過の目詰まりによる、取水停止に追い込まれている緩速ろ過浄水場が全国的に増えています。
こうした状況を解決するために、(株)水処理技術開発センターは凝集剤の注入無しの生物ろ過による高濁度除去を前処理とする緩速ろ過システムを提唱しています。
1.生物ろ過システム概要
(1) 急速ろ過装置(ろ過流速100m/d~300m/d)
河川水、地下水中には無数の土壌細菌、植物プランクトン、動物プランクトンなどが生息しています。
本システムは「効果的な生物急速ろ過機能」メカニズムしたシステムです。
一定の直径に粒度調整されたろ過材として、①活性炭、②ゼオライト、③火山砕屈岩、④廃ガラス発泡材、⑤貝殻製ろ材、⑥プラスチック製など、さまざまな材質の多孔質材料を用い、微生物の濃集により、水中の溶解性成分の接触酸化ならびに、微生物の生理代謝物質による生物凝集による濁度除去効果を高めた「急・高速ろ過システム」です。
今回の実証実験に用いる生物担体としては、①衛生面・水質安全性を確保出来る良好な成分であること。②生物担体の製造コスト、価格が安価であること。③ろ過水の流速による摩耗、劣化にたいしても安定性があることなどを基本に選定しました。特に島根県の地元産業製品である「硬質ゼオライト」を「ろ過材」「生物担体」として選択し、上水道用の「生物ろ過システム」としての効果を発揮します。
(2)ろ過システムについて
水処理、浄水処理における「ろ過」システムは、近年の以下のように分類されています。 ①緩速ろ過・ろ過流速3m/d~6m/d ②中速ろ過・ろ過流速30m/d~60m/d ③急速ろ過・ろ過流速90m/d~150 m/d ④急高速ろ過・ろ過流速200m/d~250m/d ⑤高速ろ過・ろ過流速300m/d~500m/d
(3)生物ろ過システムについて
以上、水道の浄水処理では「砂ろ過」を前提としていますが、前処理のろ過材の材質としては、(1)に示したように、さまざまな材質の「ろ過材」が使われています。
生物ろ過としては「緩速ろ過」が河川水、湖水、伏流水などに広く用いられていますが、アンモニア性窒素対策・濁度除去目的において河川水の「生物急速ろ過」が広がっており、さらに地下水を原水とする「除鉄、除マンガン、ヒ素除去を目的とする生物急速ろ過」があります。 今回の忌部浄水場における緩速ろ過の前処理システムとして、「濁度除去生物急速ろ過」のの実証実験を行ないます。 さまざまな材質による「ろ材粒径」の空隙率の活用、同時に担体の多孔質性による微生物の生育機能を活用したことによる「生物ろ過機能」が、多様な成分の①生物接触酸化・②生物分解・③生物凝集効果を高めることによって、良好な水質に変化させる機能を持った「浄水処理システム」であることを証明する実験にしたいと考えています。
地下水や伏流水を原水とする「生物ろ過・下向流ろ過方式」は、高濃度の鉄、マンガン、ヒ素、アンモニウムイオンを急・高速ろ過によって同時除去することを証明してきました。 この生物ろ過システムのメカニズムは「生物接触酸化機能」と「生物ろ過機能」(ろ材による「ろ過機能」とともに、微生物濃集による凝集効果ならびに微粒子の捕捉による微粒子の除去効果)による優れた浄水処理システムです。
今回は表流水における濁質を除去する機能、水中の溶解性成分を生物接触酸化し、水酸化物に変化させることが出来るシステムとして実証実験します。 従来から緩速ろ過装置の濁度除去前処理システム、「荒ろ過・礫間浄化装置」については、生物の生理対象物質・多糖類の粘性のある生理代謝成分が、水中のコロイド粒子をろ過除去するうえにおいて、濁質の捕捉に大きく寄与することが知られるようになりました。
水中の濁度(粘土)、鉄、マンガンなどの除去対象物質が、土壌細菌などが細胞表面から吐き出す「代謝生成物」(ゼラチン状をした蛋白質、多糖類・酵素など)を活用したろ過です。高分子成分が、①水中の還元性の溶解性金属を酸化させる酵素を含むこと、②高分子状の代謝生成物が、ろ過材表面を「蛋白質・ゼラチン状成分の成分」で覆うことにより、濁質が「ろ過材」表面において、捕捉できるようになり、またろ過層を逆洗することにより、ろ過機能・濁質捕捉機能を回復できます。近年には凝集剤が不要なエコシステムとして、高い評価が与えられています。
生物ろ過の特徴として、緩速ろ過と同様に生物の馴養期間がありますが、生物ろ過塔の立ち上がりの時期を水温が高くなる5月以降にすれば、ろ過開始後、約20日間くらいの日数で「生物ろ過機能」は立ち上がります。
水温が15°C以上になる5月以降に立ち上げをすれば、「ろ過塔内に充填した生物担体」の表面に生物は濃集され、粘性を有する生理代謝物質に覆われているため、冬期の低水温期における濁度除去も効果的な性能が持続します。 水温が低下する冬季は、濁度が低下する時期であるため生物ろ過機能が低下したとしても、通年的な濁度成分は特殊ろ材による濁度除去効果を発揮します。